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DOS & DON'TS
THE CREATORS PROJECT - SPIKE JONZE
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![]() ![]() ILLUSTRATION BY MILANO CHOW
作業員は、バスの上に何トンものコンクリートを流した。バスが移動しないよう、42台のバス全てに、同時に流さなければならなかった。そしてそれから一ヶ月間、ひび割れを防ぐため、コンクリートにしょっちゅう水をかけて濡らすという作業をちゃんと固定されるまで繰り返した。この何台ものバスは、合体させることで自然界で最も頑丈な形である蜂の巣状になった。ブルース曰く、このシェルターは爆破でできたクレーターから1.6キロ以上離れていれば、核爆弾に耐えることができるのだとか。しかしこのシェルターは、核爆弾のターゲットとされる建設物から少なくとも30キロは離れた場所にあるから、そんな近距離の攻撃を心配する必要もないだろう。後に“アーク・ツー”と呼ばれることになるこの施設が完成した1985年には、何百人もが避難できるような3,000平方メートルの地下施設と化していた。 ブルースはカンザス州のサンタクロースっぽい外見をした男で、話し方は中西部とカナダの訛りが入り交じっている。70代になる彼は、数年前の心臓発作のせいで少し弱視だが、年配だということを忘れさせられるほど活気に満ち溢れている。彼が核戦争の心配をし始めたのは、1950年代後半、大型爆撃機が離着陸していたジョージア州のドビンズ空軍基地の管制官だった頃だ。「あそこはアメリカに5つある立ち入り許可が必要な施設のうちの1つだった。すごく不思議な航空機をたくさん見たよ。ブラックバード、空飛ぶ翼、そしてその他、あれ以来一度も目撃してないような航空機も。あと、UFOも見た。UFO話は山ほどあるよ。とにかく、ああいうものを見ているうちに、核兵器の威力について考えるようになったんだ。そこの仕事を辞めてからは、補給品を蓄えて袋に詰めたりして、徐々に脱出を計画するようになった」 それ以降、ブルースは150回も転職している。そのうちの一つが、1960年代にユタ州とアイダホ州中に20ものシェルターを建設するというゼネコンの仕事だった。そして1974年なると、彼は副大統領のスピロ・アグニューが、自分のことを狙っていると思い始めるようになった。「ウワサによると、政府の極端な見解に反対する人を収容するためのキャンプが、幾つも建設されていたらしいんだ」と彼。奥さんの家族が住んでいたという事と、現在アーク・ツーがある土地を既に所有していたという事が理由で、彼はホーニング・ヒルズに引っ越すことにした。 彼はある時、スペースシャトル・チャレンジャー号を海中から回収した、ロボットアームを作った会社を共同運営していた。ここから、アーク・ツーの建設資金が手に入ったとも考えられるのだが、彼自身は資金の調達方法や、建設費などについて多くを語らない。なぜなら彼は、アーク・ツーのせいで税務署からさんざんうるさく言われてきたからだ。査定人に建設費の詳細を提出したにも関わらず、提示された金額で、あのような規模の地下施設を作るなんて不可能だ、と言って彼らは納得しなかった。有力な消息筋の査定では、当時の建設費はおそらく100万ドル近く。もし今、この施設を再建するとしたら、200万ドルはかかるとされている。 先月ブルースを訪ねてみると、彼は“90パーセントの確率”で6週間以内に核戦争が始まるだろうと言った。イランのペルシャ湾には既にアメリカの航空母艦がうろついているし、数日以内にもう一隻加わるのだとか。彼はこう言う:「アメリカはそのうち、イランに小規模な核爆弾を落とし、パキスタンは“使うか負けるか”の2択を強いられる状況になるだろう。更にその後、インド、イスラエル、ロシアも戦いに加わるハズだ」。オレは堪えきれず、ちょっと生意気な学生のような気分で、本当にこれを90パーセント確信しているのかと聞いてみた。すると彼はこう答えた:「信じるさ。ボクは北米で最も大きな個人用のサバイバル施設を所持してる男だよ。モチベーションを高くしなきゃ。ボクの周りの連中も皆これを信じてるさ。バプテストの牧師に、今後1年以内に、我々も昇天してキリストに会うことがあるのか? とか、キリストが天から降りてくるか? とか聞いてみなよ。彼らはそれを信じてるに決まってる」。オレは急いで、別に核戦争自体は否定しないが、90パーセントの確率が気になっただけだと付け足した。そして、自分だったら1パーセントくらいの確率じゃないかな、と呟いた。すると、その後彼はオレに腹を立てる度に「この1パーセント男が」と言ってきた。しかも、案外それがオレには堪えた。 ![]() ブルースの一番の心配は、シェルターの生活を保つための人数、そして、シェルターがなくなってしまった後に、外で生存するための人数が集まるかどうかってことらしい。アーク・ツーは、彼にとって間違いなく大切だが、あくまでもそれは“放射線という海を渡る船”でしかないのだ。それよりも、その後の復興活動の方が重要だ。そのため、彼はサバイバル主義者と呼ばれることを嫌がる。彼は、シャエルターから這い出した生存者と新しいユートピア的社会を築こうとしているのだ。彼の復興計画を10,000文字以内で説明しろと言われても不可能だが、彼のウェブサイトにはその全てが掲載されている。簡単に言えば、同じ復興原理に基づいて活動する集団が世界中にいて、それらがいつか合体する、という感じのものだ。そのため、彼は“チーム”という復興計画の中心になるリーダーを、アメリカの50州すべてに確保している。その人たちはしょっちゅう彼とメールのやり取りをし、彼のEメールのニュースレターを購読し、彼の無料パンフレットやDVDを配布して回っている。彼らも核戦争を心配していて、実際シェルターを持っている人もいるそうだが、ブルースによると彼らは「口ばかりで行動が足りない」らしい。「テキサスで言えば“カウボーイハットばかりで肝心の牛がいない状態”だね」。彼はウェブサイトで、シェルター建設についてのコンサルティングを無料で行っている。しかし、それには3つの条件がある:今すぐにシェルターを造りたいということ、既に土地を確保しているということ、そして、どんなに少なくても予算があるということ。コアなサバイバル主義者からしてみれば、ブルースは伝説的な人物なのだ。 彼は、昔から皆にホーニングズ・ヒルズに住むよう促して来た。何時間か労働をするという条件で、誰でもシェルターに入れてもらえる。今まで、不思議な人たちがこの周辺を出入りしてきたと彼は言う。「カルト集団とそのリーダーなんかが何度も訪れた。でも、ボクがあんまりうるさく言うもんだから、信者をうまくコントロールしなきゃならないリーダーたちはたいてい、信者たちが“待てよ、なんでこんなうるさい男の言うことまで聞かなきゃならないんだ?”ってなるのを恐れて、知らないうちに集団ごと消えてるんだ」とブルース。現在、58人もの地元住民(多くは親戚)がシェルターに入りたいという希望を確実に出している。まあ、町中の住民が彼の存在を知っているわけだから、世界が戦場と化した途端、オンタリオ州の人々がきっと一斉に群がってくるんだろうけど。 アーク・ツーの中
地上にある巨大な緑の鉄のドア、3メートルの鉄の柵、そして錆びた通気口以外は、地下に何があるか全くわからない。ドアを入ると、緩やかな下り坂がシェルターがある山内まで伸びている。その脇には、食料品などを運び入れるための電気式ベルトコンベアがあり、一番下には受付と汚染除去エリアがある。放射線で焼け焦げ、地獄のようになった地上空間を歩いたアーク・ツーの住民が、再び施設に戻る時、ここで放射能をキレイに洗い流すのだ。汚染除去エリアを過ぎると、シェルターの中心部へ到着。そこには大きな廊下から、枝分かれするようにして30ものバスの部屋が連なっている。床の大半は汚くて荒いリノリウム材でできていて、ちょっと田舎の家っぽい感じがする。明かりは、建築現場にあるような壁取り付け用燭台に電球を入れたもの。汚くてどんよりとした明かりだが、十分に明るい。そして、中は想像するよりもずっと広い。スクールバスを使用しているからか、全世界の滅亡、人間社会の破壊によって出現した、モーターバイクを乗り回す人食いの突然変異体から逃れるための地下の怖いシェルターというよりは、廃校になった小学校の地下室という雰囲気だ。 バンクベッドが壁に6つずつ連なっている部屋の一番後ろに行くと、ちょっと息苦しくなってくる。寝泊まりする部屋は、性別と年齢によって分けられていて、世界の破滅を経験したかわいそうな子供たちを喜ばせるため、どの部屋にも動物の名前がついたサインが貼られている。成人女性はアンテロープ、成人男性は雄牛、幼い女の子は猫、もしくは子猫、ティーンの女の子は鹿、ティーンの男の子はヘラジカ、幼い男の子はカエル、そして幼児はアレチネズミ。ご心配なく、セックス用のプライベートな部屋もちゃんと確保されてるから。 発電機があるシェルター中心部の隣に、司令室がある。ブルースは、アーク・ツーを地下に埋もれた潜水艦のようだと言う。海の上の船がそうであるように、キャプテンの彼が絶対権力を握っている。彼は、暴動や反抗などが起こる可能性を認識している。そして発電機と司令室の隣にある、窓のない独房のような部屋で、寝泊まりする予定らしい。 ほとんどの部屋は基本的な家具が1、2個あり、仮の使用方法が書かれたサインが貼られているだけの状態だ。図書室には本がまだ置かれていない棚が連なり、パソコンが一台もないパソコン室、通信機がない通信室もある。その他の部屋も不発に終わっているものが多い。誰かに歯医者の椅子とレントゲンの機械をもらったブルースは、歯科エリアを作ったものの今では椅子が錆びてしまい、レントゲン機は乱暴者に破壊されてしまっていた。また、多くの人々に、「そのうち表れるであろう“救い様のない失望感や閉所恐怖症”にどうやって立ち向かうのか?」と質問されたらしく、感覚遮断室も用意されている。これは、理論的に神経衰弱の治療に役立つと言われている、体温と同じ温度の生理食塩水が入った大きなお棺だ(って言っても『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』では、ウィリアム・ハートを原始人みたいなものに変えちゃったりしたみたいだけど)。とにかく、ブルースの感覚遮断タンクもうまくいかず、今では布団を入れるクローゼットとして使用されている。第一、救い様のない絶望感なんてブルースには関係ないことだし。「爆弾が投下されれば、みんなもっと生きたいと思うようになるよ。今は、“別に生き延びたくない”とか言ってるけど、そんなハズはないさ」。ブルースは、世界が崩壊する時がきたら、きっと誰もがシェルターに入りたがるだろうと言う。 実際に戦争が始まれば荷物をもっと運び込んでくるハズだから、ほとんどの部屋が今よりかは部屋らしくなるだろう。だが彼は、シェルターの外に一体どれほどのものを蓄えているのかについては教えてくれなかった。中途半端な部屋や空想的な快適設備を見て、結局彼は100万ドルを費やして立派な砦を造っただけなんじゃないかと決めつける前に、シェルターでのサバイバルに向けて、まず基本的なシステムを見てみよう。 アルマゲドンを生き延びる じゃあ、3ヶ月地下で生存するには何が必要? 放射性物質が混入していない空気:地上にあったあの錆びてる通気口は、実は吸気装置。放射線物質が混入していないキレイな空気を吸気し、万が一混入したとしてもシェルターには入ってこないようになっている。ブルースが全部説明してくれたんだけど、ちょっと複雑だから、興味があるなら彼のウェブサイトを参照(って言ってもどうせ見ないんだろうな)。 キレイな水:裏口付近にあるアーク・ツー独自の井戸は、2000年に完成したもの。「井戸にはポンプが二つある。ポンプがダメなら、圧力ポンプを使って、それもダメなら牛乳用タンカーを使う(井戸の側にある、5,000ガロンもの水が入っているタンカートラック)。で、そこからバケツで水を組むという仕組みだ」 生ゴミ処理:シェルターには“大規模なモーテルほどの大きさ”の浄化槽があるらしいので、汚水をたくさん溜め込むことができる。 食料:ブルースは、シェルターと自宅の両方に食料を蓄えている。サバイバル食で最もいいのが蜂蜜と麦らしい。両方ともほぼ永遠に保存が可能だとか。エジプトの古墳に埋められた麦が現在地上に生えているという話を彼は自慢げに話す。戦争が始まってからシェルターに何人集まるかによっては、食料が不足する可能性もある。しかし、長期的な問題ではないので大丈夫。5、6週間もすれば、皆シェルターから出て、廃墟の中から食料を見つけ出してこれるから。 電気:アーク・ツーには二つの発電機がある。現在使われているのは1940年代の古い黄色のキャタピラーで、予備として75ワットのパーキンズもある。もしこの両方が動かなくなった場合は、発動機に繋げて継続的にこぐと、最小限の電力が発生する自転車を使う。発動機用のディーゼル燃料は、シェルター外の地下タンクに蓄えてある。排気システムはかなりいい。普通、発動機が動いていると煙と臭いが凄いのだが、シェルター内ではぜんぜん臭いがしない。 断固たる意欲:ブルースに、シェルターの前で“お願いだから入れてくれ”と頼む集団に対して、どのように対処するつもりなのか聞いてみた。「もしそういうことがあった場合、シェルターに繋がる道のふもとに警備員を立たせて、“こんにちは、あいにくシェルターは満室です。帰り道はあちらですよ”と言わせるつもりだ。もちろん、彼らがじきに死ぬなんてことは教えないさ。放射線が充満している中、3、4日も彷徨っていればそう長くは生きられないだろう」 もしブルースや彼の奥さんが戦争が始まる前に亡くなった場合、シェルターがどうなってしまうかについては話してくれなかった。なぜなら彼は、戦争はもうすぐそこに来ていると信じ込んでいるから。しかし、ブルースの友人や、彼を応援しているファンは、きっと地方自治体がすぐに地下施設を破壊しに来るだろうと予想している。彼らはコンクリートがバスに流された瞬間から、ずっとそうしたがっているのだから。 BEN WHITE サバイバル言語集 ALPHA STRATEGY:アルファ戦略。これは、実際に消費するよりも多くのものを蓄えておくという考え。余り物はバーターで使ったり、哀れな人にあげたりできる。 |