DOS & DON'TS




THE CREATORS PROJECT - SPIKE JONZE







ロシアのハッピーアワー。 Photo by Kommersant





「アメリカでは、人がウォッカを飲む。
でもロシアでは……ウオッカが人を飲む」
?ヤコブ・スミルノフ / 喜劇の天才


ロシア人っていう人種は、今、急激な早さで地球上から消滅している。ロシアの死亡率は、エイズが蔓延している発展途上国と匹敵するほど。なのに、ロシアの出生率は彼らよりはるかに低いため、ソ連が崩壊してから人口が7%も減り、現在、ロシアの総人口は1億4300万人を下回る。最近、世界銀行ってやらがロシア人男性のことを“短くて、ひどい寿命の奴ら”と報告している。彼らの平均寿命は68歳から58歳まで落ち込み、これは欧米人男性より15年も短いことになる。もしこの傾向が続くと、ロシアの人口は2050年までに1億人まで落ち込むことになるだろう。

 最大の原因はアルコール。そう、お酒のせいでロシア人は絶滅の危機にあるのだ。過去10年で700万人のロシア人が死んでるんだけど、なんとその34%はアルコールが原因なんだ。

 なぜアルコールのせいで死亡率が上がるのかって? それは、ロシアではお互いを殺しあっちゃうくらいベロベロに酔っぱらっちまうってのが理由の一つ。ロシアの殺人率は世界中で最も高い国の一つとして知られていて、ジャマイカに肩を並べるぐらいだ。殺人者の83%と被害者の60%以上はベロベロに酔っぱらっている間に事件を起こした人々。一般的な酔っぱらい殺人の経緯は大体こんな感じ:友人同士の中年男2人がAのアパートに向かい、4〜5本の安いボトルウオッカを開けて、2日に渡ってどんちゃん騒ぎをする。Aが酔っぱらってぶっ倒れ、Bはよろよろしながら、まだ思春期前のAの娘をレイプした挙げ句、絞め殺し、電子レンジを盗んで、Aのアパートに火をつけようとする。だが、火をつけている間に奴もぶっ倒れ、煙を吸って死んでしまう……といった具合(どうでもいいけど、これは俺の元カノの隣の家で実際に起こった話だ)。

 おなじみの中毒系もアルコール関連の死亡原因の一つ。昨年だけで4万人のロシア人がアル中で死んでいる。ロシアの倍の人口を持つアメリカでアル中で死んだ奴はたったの数百人だったってのに。

 実は、これには理由がある:ロシア人ってのは一風変わったアルコールを好むのだ。試行錯誤(失明者&死者続出)の結果、彼らは近代史において最もすごい、胸毛がボウボウ生えちまうほど強力なカクテルを何種類も発明しやがった。これらのカクテルは1980年代後半、ミハイル・ゴルバチョフのみじめな禁酒キャンペーン中に誕生した。彼は国民の酔いを冷まそうとアルコール製造を厳しく取り締まった結果、すぐにロシア人男性の平均寿命は上がった。だが、あいにく怒り狂った国民の反発により、禁酒キャンペーン、そして彼の政治人生までもがあっけなく終わりを告げた。そして、ロシアの愛くるしい国民的マスコット“ウォッカ”が再び登場したのだ。

 てなワケで、ソ連崩壊後のロシアではウォッカなんてどこでも買うことができる。でも、だからといってロシア人がホームメイド・ウォッカのことを忘れたわけじゃない。まぁ、死者4万人ってのがいい証拠だな……。何はともあれ、これが最もヤバい6つのロシアン・カクテルだ。

W.C. FIELDSIKOV


Shipr on the Rocks

Hairspray
コロン、ヘアスプレー、凍結防止液、靴磨き用クリーム、接着剤、 そしてローズ水。 一気、一気!






Flying Restaurants


1974年、ブレジネフの都市計画の一環として、シベリア鉄道よりずっと北にあるバイカル湖から太平洋まで、線路を引くことになった。名づけてBAM。夏は30度以上、冬はマイナス55度以下という過酷な土地に、3,200キロメートルにも及ぶ線路を引く、という計画だ。

 そうともなると、いくら作業中とはいえ、シラフじゃキツイ。でもあいにくシベリアの田舎じゃウォッカが手に入らない。そんな時、BAMの作業員はちょっと特別なカクテルを発明。

 まず、安物のオーデコロン(大抵はシプル)とグラスを用意。次に、凍った土を砕くために使う鉄の棒をグラスの中に立て、コロン水を棒に沿って注ぐ。コロン水に含まれた添加物は凍った鉄の棒にくっつき、アルコール成分だけがグラスに溜まるのではないか、と彼らは考えたのだ。乾杯!

ヘアスタイルを気にするのは資本主義のブタだけだと思ったら大間違い。ロシア人も、我々と同じような超強力ヘアスプレーを使うのだ。名前はラク・プレレスト、訳して“魅力のニス”。

 ロシアの中年のオバサンを見たことがあるヤツならわかるだろうけど、あのバレーボールが3つ乗っかったような髪型をキープするには相当強いヘアスプレーが必要。ラク・プレレストはまさに、工事現場で使えそうなほど強力。ロシア人オバサンに大人気だ。

 彼女たちの旦那もこのヘアスプレーに興味を持ち始めた。あんなにヤバイ臭いを発するんだから、きっと飲めば相当効くんじゃないか、と。で、実際試してみると、大当たり! ちなみに飲み方は簡単:ヘアスプレーを水の入ったコップにスプレーし、有毒な成分を水に溶かすように指で少々かき混ぜる。あとは、飲み干すのみ!
ゴルバチョフ大統領がアルコール禁止令を下してから間もなく、ソ連空軍のMiG戦闘機に“空飛ぶレストラン”というあだ名がついた。これは、戦闘機の機内食がメチャメチャおいしいというワケじゃなくて、ジェット機に積んである凍結防止液を飲むと最高にハイになれるからなのだ。

 シベリア軍にいた頃、友達がMiG戦闘機の凍結防止液を飲んでいたという33歳のディーマによると、彼らは週にショットグラス5杯分以上は飲まないようにしていたらしい。でないと、目が見えなくなっちまうのだとか。

 ある若手の将校は、ショット1杯飲むたびにベルトを1穴分キツくしたらしい。「飲みすぎ防止のため。腹が苦しいなって思うころにやめとくのが丁度いいんだ」とディーマは言う。

Shoe Polish



Boris Fyodorych-6



Rose Water

アルコール禁止時代で最も有名で、奇妙なのが、この靴磨きカクテル。これは、靴磨きクリーム自体を飲むというより、残留物を使うワケだから、まあ強いて言えば吸い終わったマリファナのカスを味わうようなもんだ。

 材料は黒い靴磨きクリーム、コップ1杯の水、そして黒パンを1枚。まず靴磨きクリームをたっぷりと黒パンに塗ってから、コップに蓋をするように乗せ、そのまま数時間放置する(アル中の禁断症状で体中ブルブル震えてるだろうけど、ここはガマン)。もうこれ以上待てないって頃にパンを外し、残った毒水を飲む。なにやら、靴磨きクリームから発せられる毒素が水に溶け込むとアルコールに近い液体ができるって事をロシア人は発見したらしい。ちなみに先ほどのパンも、靴磨きを丁寧に拭き取ってから食べてみるといい。パンに毒素がたっぷりと含まれてるから、あっという間にラリッちゃえる。
ケガを直す方法はたくさんある。例えば外科用接着剤で傷口を塞いだり。ロシアの医者は特にこの“ボーリス・フィヨドリッチ−6”という外科用接着剤がお気に入り(ちなみにロシア人はあまりにもこの接着剤がお気に入りなため、親しみやすいように“ボーリス・フィヨドリッチ”というあだ名をつけたのだとか。本当の名は“BF-6”)。

 BF-6は、傷跡を塞ぐ以外にももちろん使い道がある。例えば、とてつもなく酒が飲みたい時にもうってつけ。

 このカクテルがたぶん一番難しい。まずBF-6をコップに入れてから、スプーンか何かでグルグルとひたすらかき混ぜる。2,3時間ほどかき混ぜているうちに、BF-6は固体と液体に分解するハズ。コップのふちにくっついた部分は無視し、真ん中に残った液体を飲む。これこそが、アルコール禁止時代にウォッカもどきとして愛された接着剤カクテルだ。
キミの婆ちゃんは、なんとかヨレヨレの皮膚が顔から剥がれ落ちないようにとローズ水入りの化粧品を毎日使っているに違いない。だがもし家族にロシア人がいたら要注意! あっという間にローズ水が消えて無くなるかも。

 ローズ水の人気の秘密といえば、なんと言っても手ごろさ。他とは違い、ローズ水は何の下準備も無くそのままグイッと飲めるのだ。缶ビール同然。だからローズ水が見つかればラッキー。蓋を開け、口にくわえ、逆さにし、そのままボトルの底が見えるまで飲み干す。そう、まるで暑い夏の日にビールを一気飲みする勢いで。あ、でも実際は1,2口くらい飲めば、序所に体が火照ってきて、まるで柔らかくて暖かなローズ畑に身を委ねるようにゆっくりと……気を……失う……。