DOS & DON'TS




THE CREATORS PROJECT - SPIKE JONZE











現代の困窮したモスクワ人にとって、古いリーバイス550と2枚重ねのクリネックスのトイレットペーパーがどんだけ貴重なものか? モスクワで一番おしゃれなナイトクラブに乗り込んで、1980年代ロシアのリアルな文化的通貨を、今どこまでこの目で見ることができるかやってみた。

 う〜ん、どうも時代は変わったらしい。

MARK AMES

Photos by John Heisel



1番目:クラブ・ファースト

“神様アメリカ人”のコスチュームに身を包む:ベージュのブルックス・ブラザーズのスラックスと青いオールドネイビーのシャツ、ライトブルーのパタゴニアのスキージャケットとコロンビアのブーツ、ヤンキースのキャップと緑色のバックパック。それからダイマという名の通訳を連れて〈クラブ・ファースト〉へ(本当にそういう名前のクラブなんだぜ)。

 ばかでかい警備員に近づく。『俺の持ってるリーバイスをやるからタダで入れろ』と彼に言うようにダイマに通訳してもらう。警備員はものすごく怒ったように頭を振り、俺たちから60度離れたところを見ながらその四角い体でクラブの入口をふさいだ。失敗!

3番目:GAZGOL’DER

〈Gazgol'der〉は去年オープンした。看板も出てないし、並んでいる客がどこにいるかわからないから見つけるのがものすごく難しいクラブだ。しかも入るのが一番難しいクラブでもある。警備員もいないから話さえつけられない。代わりにあるのは小さなビデオカメラのついたドア。

 ドアベルを鳴らす。返事なし。もう一度鳴らす。そしてもう一度。リーバイスを取り出してカメラに向かって振る。「リーバイスが欲しいかい? キミのものだよ!」

 ついに小さなスピーカーから声が聞こえた。「いらない」

 「リーバイスだぜ!」と俺は言った。

 「いらねっつうの。帰れ」
2番目:クラブXIII

〈クラブXIII〉は昔のKGBの本拠地から歩いて5分の場所にある。3人のでかい警備員に近づき、バックパックの中から古いリーバイス550を取り出し、1人に差し出す。  「これをやるからタダで中に入れてくれ」と言う。

 ヤツは目をそらした。代わりに近くにあった階段に上がりヤツの手にトイレットペーパーを数個握らせる。ヤツは「いらん!」と言って。俺を突き飛ばした。

 「えっ、これいらないの?」

 ヤツは返事をしなかった。






4番目:ビブリオテカ

〈ビブリオテカ〉はモスクワの高級ストリップクラブシーンに加わった最新のストリップクラブだ。180センチの茶髪の素敵なストリッパー、ヴィカが俺のところへやってきて2曲続けてラップダンスをしてくれた。終わった後、俺は拍手せずにはいられなかった。

 彼女に20ドル札を渡す代わりに、フレッシュな2枚重ねのトイレットペーパーを1つ渡そうとした。彼女はそれを振り払った。

 「いいから、とっといて」と俺は彼女のTバックにそれを挟もうとしながら言った。

 でも彼女はいやがり続けた。たぶん太っ腹すぎたんだと思う。



5番目:GARAZH

モスクワで一番確実なアフターアワーズのクラブ。ちょっと大人でお金のある、エクスタシーとコカイン好きな人たちの定番の場所だ。

驚いたことにリーバイスもトイレットペーパーも出さないうちに中に入ってもいいと言われた。そこでもっと必要としている人にあげようと考えついた。バーテンダーだ。ドリンクのお金をリーバイスで払おうとしたら、最初彼はそれを受け取ったがやっぱり俺に戻した。

 「違う違う違う」と彼は言った。

 きっとあまりにも貴重すぎるものだからひいたんだろうと気づいた。そこで、ドリンクに見合うのはこれくらいだろうと彼にトイレットペーパーを渡した。彼はそれを受け取り、テーブルに置いた。にも関わらず、驚くべきことに、この恩知らずのバカ野郎はドリンク代を払うように俺に要求してきやがった。