もし俺とお前の思考回路が一緒なら、たぶんボーン・サグスン・ハーモ ニーがデビューしたての頃は気に入らなかったと思う。どちらかといえ ばブート・キャンプの曲“Leflaur Leflah”の歌詞がどうなっちゃってるか の方が気になって、このヘンテコなパーマしてシャワーキャップかぶっ てるアメリカ中西部出身の早口兄ちゃん達のことはどうでも良かった んだ。ハッキリ言わせてもらうと、ボーンがビギーとのコラボをするまで イースト・コースト寄りの奴らはボーンの偉大さがわかってなかった。こ のコラボでやっと、ボーンが実は既にグラミー賞を獲得し、3000万枚の セールスを記録し、手の込んだ髪型を流行らせた革新的ギャングスター ・ラッパーだって事を知った。オイオイ。サグスの世界にハマって初めてわかる事といえば、カリスマ的存在の ビジーやレイジー、そしてスタイル担当のウィッシュがやたらと目立って いるにも関わらず、実はグループの大黒柱的な存在を果たすのはクレイ ジーだってことだ。この男はマジでブッ飛んでる。リル・ジョンの“ウィー・ ドント・ギブ・ア・ファック”やデッド・プレズの“ウォーク・ライク・ア・ウォリ アー”でゲスト参加しているのを聴けば、彼の才能は一目瞭然さ。想像を 絶するレコード会社のトラブルに巻き込まれたり、コラボしてきたメジャ ーなラッパーの多くが死んだり、それに今となっては若手タレントのR.ケ リーやネリーに悉くネタをパクられたボーン・サグスが、ここ数年間は発 いよ。でもニガー(黒ンボ)って連発してるのが嫌 だ。ボクがニガーって言ったことは記事に載せな いでね。悪い言葉だから。アルバムの途中でビー ジーズの“ステイング・アライブ”をサンプリングし てたね、あれは良かった。 僕は、ラップってよくわからないんだ。1990年 か1991年に売れたバニラ・アイスは覚えてるけ ど。“アイス・アイス・ベイビー”は大好きだった。あ れはクイーンとデヴィッド・ボウイの“アンダー・プ レッシャー”っぽかったよね。あの曲も良かったな ー。“アンダー・プレッシャー”は1982年か1983年 に働いてたラジオ局で流したよ。確かイリノイ州 ザイオンのKZ97FMとWKZN-FMにいた頃かな。53 V1N 8 狂しそうになっていたのも無理はない。だがクレイジーに聞いてみたと ころ、幸いそれも回復のきざしを見せているようだ。 VICE:クレイジーって名前の由来は? クレイジー・ボーン:昔グループのみんなで名前を付け合いっこしてたん だ。若い頃俺たちはマジでワイルドでクレイジーだった。レイジーの名前 は俺が付けた。ある日俺は彼に、「お前はレイジー・ボーンって名前にし なよ」って言ったら、彼は「じゃお前はクレイジー・ボーン」って。単純さ。 まだ無名だった初期の頃の一番クレイジーな出来事といえば? 12ゲージの散弾銃でパートナーのウィッシュ・ボーン[写真参照]の足 を間違えて撃った時かな。あのせいで俺はムショ行きにされた。あの頃 は生活がキビシかったから酔った勢いでそこら辺の二ガーから金を巻 き上げてたんだが、気が散った瞬間に間違えて彼の足を撃っちまった んだ。12ゲージで直射だぜ、わかるか?彼は運転席で、俺は膝に銃を置 いたまま泥酔状態で助手席に座ってた。で、銃身をカチっと上げた瞬 間彼の足に一発お見舞いしちまったんだ。あれは人生で一番クレイジ ーな出来事だね。結局、彼自身は告発しなかったんだけど、州の警察に バレた。オハイオ州では銃身の短い散弾銃は違反なんだ。たぶん他の 州でもそうだと思う。 数々のハプニングの中、どうやって正気のままでいられたんだ? スゲー大変だった。相当精神的に強くないとメゲちまうよ。まずはイー ジー.Eがエイズで亡くなった。あれは狂ってたね、俺たちはレコード会 社と契約したばかりでイージーとは死ぬまでの1年間ずっと一緒に活 動してからな。彼は俺たちのためにクリーブランドからロス行きのバス のチケットを買ってくれたんだ。あの頃は飛行機ってものがよくわかっ てなかったから、「バスで行こう、どうってことない」ってことになった。 2日後、彼は俺たちをホテルまで迎えに来てくれて、スタジオへ向かっ た。それから毎日スタジオ通い。イージー.Eは最高だ、彼のおかげで今 がある。でも彼がいなくなってから全てが変わっちまった。業界の奴ら は俺たちが何もわかっちゃいないかのように扱いやがって、何かにつ けて全てレーベルに頼るハメになった。未だにあのルースレス・レコー ドと関わってたら俺たちはたぶんホンモノのギャングまがいのトラブ ルを起こしてただろうな。 そして今では皆ボーンの音楽を真似するようになった。 確かに今は多くのラッパーが俺たちみたいに歌いたがる。洒落になら ん。でもそんなことに囚われるな、あれはお子様向けのクソだ。特に結 婚して子どもがいる奴らは変な争いに巻き込まれないほうがいい。本 物の男ってのは見ないふりをするんだ。仕事で知らない人だらけの街 を転々としてるから面倒なことは起きてほしくない。有名になると周り は自分のことを知ってる、敵も自分の顔を知ってる、でも自分は敵の顔 が全くわからない。だからキリストも言ったように、仕返しせずに侮辱 を甘んじて受けるべきなんだ。 かなりマジな話だな。今までの経験を通して気持ちを改めたってことか? 考え方が変わったな。昔は自分で自分をイカレてる状況に追いやって たから今ようやくそのツケが回ってきて、それを正面から受け入れなき ゃならないって感じなんだ。新聞で俺が養育費を払わないからムショ 行きにされたとか読んだろ?でも今俺はずっと賢くなった。マリファナ もやめたし、昔から酒はそこまで飲まないタチだけど一応今も抑え目 にしてる。以前はただ精神的に弱かったんだ、わかるだろ?それを変え る必要があったんだ。今はエホバの証人の信者として聖書を勉強した り、いろいろ良い方向に向けようと努力したりしてるよ。 道のりは長いな。でもヤバイ犯罪とかもう何年も前にやめたんだよね? まあ、音楽初めて12年間だから、犯罪をやめてからもそれくらいは経つ ね。だから今俺が「ホームレスで、二ガーから金を巻き上げてる」なんて ラップしてもリアル感が欠けてると思う。俺はエンターテイナーだからそ んなことはもうしない。テレビにも出てるから顔は知られてる。そういう 意味では犯罪を起こそうなんて気にはならないね。眼中にない。そんな アホなことをしたら一生ムショ行きにされちまう。 俺が生きてきた道は充分承知してるし、それを皆に伝えるのもいいと 思う。でも最近のアーティストは皆自慢げに話す。俺たちも昔はクスリの 売買とか銃をぶっ放すことを自慢してたけど、よく考えてみればそんな のバカみたいだ。「なんで俺たちはこんなことを美化してたんだ?」って 感じ。きっと神様は俺たちを見て、「お前らそんな事歌ってて本当に救 われると思ってんのか?」って考えてるだろうな。 神様は拳銃や強盗について自慢するのはクールじゃないと思ってるん だ? 俺が思うに、神はいつか世界にとてつもない変化をもたらす。今俺 は音楽業界やビジネス、金稼ぎなんか前ほど気にしなくなった。経済 的に言えばボーン・サグスはもっと儲けてるハズだが、ハッキリ言っ て今の時点じゃ、俺が大金持ちになるかどうかなんて知ったこっちゃ ない。BUSTA NUT クレイジー・ボーンのソロLP『ジェミナイ:グッドVsイービル』は<ボーラー・レコード> から発売中。