Photo by Tim Barber



俺はアルコールが、最初から好きだった。初めて飲んだ時に即酔っ払 ったんだ。まだ12,3歳だった。多分、1973年位だったと思う。酒は、俺の 性格にぴったりはまり、13歳から23歳まで、かなりの量を飲んで過ごし た。最終的に、俺の脳みそは溶けてしまった。と言うか、脳細胞が2個位 しか残ってない状態までになってしまったんだ。だから、AA(匿名禁酒 同盟)に入った。俺は小さい頃から精神疾患に悩まされてきた(主な症 状は、気分のむらが激しいのと、うつ症状)、そしてAAに入ってから、俺 がアル中になったのは、その症状を自分でコントロールする為だった って事がわかったんだ。

ウィルパワーの壁に貼ってある絵から。
俺の禁酒1日目は、1983年のクリスマスだった。3年程の禁酒生活 の後、兄貴と一緒に暮らすためにツーソン、アリゾナに移り住むことに した。そこには5年半位住んだよ。ツーソンで俺は、12ステップ(AAで 行われるアルコール依存症を断ち切るプログラム)を始めたのさ、そ こでの経験は、とても意味のある経験だった。俺はすごく進歩したと思 う。でも、そこでフロリダのウェストパームビーチに住むいとこと働く 機会が出来たもんだから、1992年にフロリダに向かうことにした。い とこが経営している造園業を手伝う仕事だった。働き出して1週目か 2週目に俺の心の病は、再び忍びよって来た。俺は週5,6日、12時間労 働をしていて、車を持ってなかった。だから時には、何マイルも、AAミ ーティングの為に歩いていく事もあった。多分そんなプレッシャーに やられていったんだ。 幻覚が俺を襲うようになった。視覚と聴覚が飲み込まれていくよう な凄い幻覚に。大抵は、殺人願望の幻覚で、道行く人々を銃で撃ちまく って、殺しているっていう内容。幻覚を見ているときは、すごく生々しく 感じた。でも、幻覚が去ったら全ては夢のようだった。なんだか失神し た後に意識を取り戻す感じと似ているんだけど、幻覚を見ている最中 は、紛れもなく俺自身の現実に起こっている出来事なんだ。幻覚の後、 幻覚の中でやった行動を、実際に起こせば良かったと思っている自分 がいるのに気付き始めた。聴覚の幻覚は、馬鹿でかい爆発音が耳の 中で鳴っている感じだった。ダイナマイトや、爆弾が爆破しているよう な。俺は、これらの幻覚を否定し続け、そのうちに止まると思い続けた。 『こんなのは全部まやかしで、その内に止まるさ』ってね。でも、幻覚 は終わらなかった。

ウィルパワーの壁に貼ってある絵から。
そしてある日、仕事に行く為に朝5時か、6時に起きたけど、『俺はもう この状態では働いていけない』と思い、フロリダ、デル・レイビーチにあ るサウス・カウンティー・メンタルヘルスに入る事にした。始めの3,4日 は施錠されてる病棟にいて、そのあと7日か8日間位病院にいたな。病 院は、俺を検査して、色々な薬を試したりしていたさ。8月の終わりに病 院を出た時、シカゴの近くに住む姉が俺を引き取るって申し出てくれ た。俺は、服だけを鞄に詰めて、飛行機に飛び乗った。フロリダにはも っとほかの物もあったんだろうけど、俺の頭の中は霧がかかっている みたいで、一体何を持っていたのかも分からない。何であれ、いろん な物をフロリダに置いてきた。

ここに着いて、プログラムに入ったよ。俺の診断は、躁うつ、精神分裂 症(統合失調症)、単極性うつ病となった。あの頃の俺はハッピーな自分 じゃなかったさ、すごい量の薬を飲まされていたし。デイ・プログラムに いたジョブ・コーチが、Kraftの本社での仕事を紹介してくれた。俺の仕 事はなんでも屋で、皿や鍋とかを洗ったりする事だ。週5日、4時間労働 をして、昼からはデイ・プログラムに通った。このプログラムに通って 12年になる。始めてから、集会場所が2度変わったし、色々な患者の顔 や、スタッフの出入りを見てきたよ。

Kraftには2年いた。1日4時間のシフトで、8時間労働を押し付けられ たんだ。だから10年前にDominick`s Supermarketに移った。これまた プログラムのジョブ・コーチが話しをつけてくれたのさ。1994年のクリ スマス・イブの日から、俺はそこでも、なんでも屋として働いている。商 品を袋に入れたり、値段を調べたり、商品を棚に詰めたりさ。働いてい る時間の半分は、駐車場で買い物カートを集めているよ。なかなか悪 い仕事じゃない、ずっとしていたい仕事では無いけれどね。GED(一般 教養、日本で言う大検)を取ったら、この仕事を続けながらCommunity Scholarって言うプログラムに入りたい。そこでは、大学での受講の仕 方(ノートの取り方や、テスト勉強の仕方)なんかを教えてくれるんだ、 1年位でさ。そしたら、コミュニティー・カレッジで麻薬とアルコールのカ ウンセラーの資格を取りたい、俺には、薬や酒に悩んでいる人の話をた くさん聞いた経験があるからね。学校に行きながらスーパーでの仕事 は続けるつもりさ。そこそこの年金を貰えるようにしたいんだ。

俺自身の精神の安定状態については、いまも改善の余地はある。最 近、重い不安と、動揺の症状に悩まされているんだ。俺を取り乱させる 事だってある。でも、フロリダで経験した、人々をなぎ倒して行く様な、 酷い幻覚は無くなったな。きっと無くなった事に感謝しなければなら ないよ、あんなに深刻で、実体のある事は二度と起きて欲しくない。考 えるだけで怖くなる。俺は、日を追う毎に良くなっていく現実を感じて いるんだから。

JEFF SMITH


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