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DOS & DON'TS
THE CREATORS PROJECT - SPIKE JONZE
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![]() ![]() ザ・リバティーンズにとって世界が暗くなり始めたのは、2002年の 終わり頃、彼らがミック・ジョーンズとデビュー・アルバムのレコー ディングに入った頃からだろうか。
ライブが始まった時にはもうすでに午前2時を回っていたため、 私はかなりの泥酔状態だったが、まるで1961年のハンブルグでの ビートルズを観ているかの様な感覚に陥っていた。とにかくカッコ 良かったのだ。驚くほどの混乱とカオス。その真ん中に立つピート が、シド・ウ ?ィシャスの生まれ変わりの様に見えた。いや、それか ヘンリー・ミラーの小説に出てくる変なフランスの詩人の様だった かもしれない。ファン達は、メジャーのインディーロックのライブで は見かけない、若くて汚れた天使のように美しい子達ばかりで、今 まで見たことのないパンクでグラマラスな光景だった。女の子達 は男性トイレで1インチのコークを吸い上げ、見知らぬ誰かと消 えていき、その彼氏達はビールとゲロまみれの道ばたでケンカを 続けていた。 あまりにも度肝を抜かれたライブだったので、私はすぐに彼ら をRough Tradeと契約させた。(これでも一応、私、A&Rなんです) 私とリバティーンズとの距離はすぐに縮まり、彼らと彼らを取り巻 く友人達が拠点としているパブ、Filthy McNasty?sでもよく遊ぶよう になった。(そのパブは、あのニック・ケーブやマーク・E・スミス、シ ェーン・マクゴワンらが、ウィスキーを10本空けてひと悶着起こした ことで有名な場所でもある) Filthy?sに入り浸っていたキッズの中でも、ピートとカールはア ーティスティックというか、少し変わっていた。彼らの周りのほとん どが、バンド出身か役者、またはドラッグをやっているか、それを売 っている連中ばかりで、私はチャーミングでインスピレーション溢れる彼らを、すぐに好きになった。自分達で勝手に創り上げた、完 璧な空想の世界“アルカディア”の話でいつも盛り上がっていた。 なくてもいい音楽が溢れているイギリスのインディーロック・シ ーンで、リバティーンズの名が広まるのに時間はかからなかった。 最近のイギリス音楽といえば、オアシスの残り香みたいなバンド やコールドプレイのような気持ち悪いほど感情的なバンドと趣味 の悪いダンスミュージックばかりだが、リバティーンズの音楽は、ザ ・クラッシュとザ・ジャムが狂ったかのような音で、鋭く、生々しい。 今までのイギリスのギター音楽が、なぜここまでつまらなくなっ てしまっていたかというと、その年の流行りのサウンドを、羊の群 れのごとく追いかけるA&Rが多すぎるためかもしれない。自分の クビを守る事の方が大事なために、 新しい音の発掘という危険な 橋を渡ろうとしないのだ。 コールドプレイが大ブレイクしてしまったおかげで、いたるとこ ろで“エモーショナルなクソ・インディーロック”バンドがメジャーレ コード会社と契約をし始めた。スノウパトロール、キーン、アスリー トがそのいい例だ。 似たようなサウンドと、似たようなルックスで心底吐き気がした。 そんな中、リバティーンズのライブ回数は増え続け、ファンの数 も以前の数倍になりつつあった。NME(イギリスのメジャー音楽 誌)にも頻繁に記事が載るようになり、それと同時に彼らの噂も広 まるようになった。そのほとんどがバンドを取り巻く数々の女性フ ァンやドラッグについてのウワサだった。ピートとカールはルック スも良くて若く、たぶんセックスしたくてしようがなかったのだろう が、有名になるにつれ、2人のやんちゃぶりはどんどんエスカレート していった。彼らの周りの人間を、私たちは“ラウ ?ァ-ズ&ドリー マーズ”と呼んでいるが、他人は彼らを“麻薬中毒者”や“泥棒”と呼 ぶかもしれない。普通の人が寄りつかないような暗い架線下のバ ーが、リバティーンズの世界なのだ。 デビューアルバムの完成を目の前に控えたある時から、ギター ショップからギターが盗まれたり、車が盗まれるなどの事件が相次 いで起き、ピートとカールの間にも溝が出来始めたのだった。ドラ ッグの量も増え、しまいにはピートがカールのアパートに不法侵入 し、刑務所行きになるという最悪の状態を招いてしまった。あれは 本当に最低中の最低だった。 あの時私達は皆必然的にこう思った。バンドの誰かが死ぬか、 刑務所に行くことになる、と。 あの年は、私のキャリアの中で一番ストレスのたまった年だっ たかもしれない。アルバムも完成していない、消えかけつつある バンドを前にして、一瞬こんなことが私の頭をよぎった。「自分の 仕事は、こんなにストレスをためるほどやりがいのあるものなの だろうか?」 74ページへ続く |