Plastic Little
“プッシー破壊者”クリス・ニエラトコ(吹雪の日に経営の苦しい配 達店にビール6缶パックを無理やり配達させたことでも有名)は、何 ヵ月か前に自分のスキネマ・コラムの中で俺が提案したヒップ・ホッ プ奨学金制度のアイデアを槍玉に挙げてたけど、その一方でこの 俺が“公立のラップ専門学校”設立するべきだという、とても有意義 な提案をしてくれた。この学校ではMCたちはタリブ・クウェリとか KRS-Oneを聴かなくてもラップを学ぶことができるんだ。 だけどクリス坊や、俺はすでにボストンのマイティ・ケイシーに先 を越されてるよ。ケイシーのデビューEP『オリジナル・ルードボーイ』 の「ブラック・ラッピング・スクール」を聞いてみなよ。

次の歌詞をよく聴いて勉強しな:「ニガーたち、まず最初に大切なこ とからいくぜ/自分自身の限界を知れ/どうして自分自身のままであ る必要がある?/ジガーの真似でもすりゃいいのさ/俺たちに創造性 やオリジナリティなど必要ない/チンピラ精神のR&Bギャングスタで ありさえすればいいんだ」。まあ軽く受け流しといてくれよ、イキがった 坊や。最近じゃあ学校でラップを教えてるらしいけど、ケイシーはもっ と大きな視点に立っている。最近のラップはほとんど授業のカリキュ ラムに忠実なものばかりだ。ドラッグのことを歌うのがダメなら、銃に ついて歌えばいい。デザイナーズ・ブランドの服が貧乏臭くなってきた ら、ヒップホップの洋服屋が別の服を提供してくれる。ケイシーはこん な風に論争を巻き起こす一方、我がポケッツ・ダム・ファットのポスタ ー・イメージ・ボーイ、ジュールズ・サンタナとこんな会話を交わしてく れるかもしれない:「かつてラップは黒人のプロがやるもんだった/今 じゃラップはコカイン中毒のプロがやるものになっちまった」。

ケイシーのポーカーフェイスな口調のせいで、彼が誰のことを槍 玉にしようとしているのかはよく分からないけど、まあいずれにして もチンピラに成りたがってるとおぼしきヤツか、そんな連中の真似を しようとしてるのん気なヤツのどちらかのことを歌ってるんだろう。 『オリジナル・ルードボーイ』の他の曲は、コミカルなヒップホッ プ幻想曲だ。天才ばりの曲でありながら、中身はとても愉快な内容。 かつて数学の家庭教師でもあったケイシーは、タイトル曲の「オリジ ナル・ルードボーイ」では2 Pacの「カリフォルニア・ラヴ」を盗用し、「 リカーランド・パート2」ではザ・キュアをサンプリングしつつGZAの「 レーベルズ」調にアル中たちに捧げる叙情詩を聞かせ、「ワン・ナイト ・スタンド」では新鮮で洒落た女を手に入れている。

[ちなみに、BET(※ブラック・エンタテインメント・テレヴィジョン) の番組『アンカット』で放映されてるビデオの中で最も破壊的で爆 笑もののビデオと言えば、ケイシーのPVだ。ジョーカー・ザ・ベイル ボンズマンやブラック・ジーザスのほとんど性犯罪ギリギリみたいな PVもけっこう好きだけど、ケイシーの「ホワイト・ガールズ」(グランド ・マスター・フラッシュ&メレ・メルの「ホワイト・ラインズ」をベースに してて、元歌詞の「ちょっとした事件だぜ」って箇所を「ファラカン牧 師には内緒にしといてくれ」)と言い換えてある)のビデオは最高の パロディに仕上がっていて、もはやパロディの域さえ超えている。ま るでMCポール・バーマンとビッグ・パンからの影響をダブルで受け たように、次のような歌詞を歌う「俺のベッドルームで混血児作りに 励んだおかげで/俺はアリッサ・ミラノの甲高いハイトーンのソプラ ノ・ヴォイスを手に入れた」。ところで、変態ラッパーたちに1つ忠告 しておく、BETの『ラップ・シティ』で自分のビデオをかけてもらおうだ なんて考えるのは止せ。お前らはゲットー・マフィアじゃないんだよ。] ケイシーは「メイキン・シュア」の中で次のように主張する:「もし 俺たちがリンチにあったとしたら/お前は俺と付き合ったりはしな いだろう」。ヒップホップが成熟するにしたがい、ラッパーたちは自己 批判へ向かう者とペテン師的な方向に向かう者との、2つの方向性 になってきている。

さてもちろん忘れちゃいけない、あのラップ界で一番ずる賢い奴、 デヴィン・ザ・デュードもアルバム『トゥー・ザ・エクストリーム』をリリ ースしたばかりだけど、どうもヤツはメジャーに受け入れられるため の努力以外はすべて放棄してしまったように見える。先に挙げた反 体制的なラッパーたちは、いまさら自分たちが世話になったメインス トリームで広く認められようだなんて微塵も望んじゃない。連中はそ のおかげで、もはや飢えた獣みたいなヤツしか羨んだりしないクソみ たいな人気取り競争からオサラバすることができたんだ。

マイティ・ケイシーと同様、フィラデルフィアのプラスティック・リトル もヒップホップの本流よりも、そこに浮かぶ残骸の方に興味があるよ うだ。彼らのデビュー・アルバム『サグ・パラダイス2.1』の「フォイル」 を聴いてみろ。奴らは文無しのポン引きみたいにこんなことを歌って る:「クラブに行くとき/俺は車にフォイルを付けていく/音を持って いるとき/俺は車にフォイルを付けていく」。フードをかぶったキッズ たちの間ではチューインガムの包み紙を車のフロントグリルに貼り付 けて飾りまくるのが流行ってる。コリ・ニューカーク(※タイヤを吊るし た作品で知られる黒人アーティスト)も真っ青って感じだ。プラスティ ック・リトルは彼らのアイドルたちがそうだったのと同様、自分らのフォ ロワー連中に攻撃されまくる寸前って感じだ。

『サグ・パラダイス』は最高に笑えるアルバムだ。まるで、のん気 にニヤニヤ笑ってるヒップホップの横っ面をピシャリと叩く痴話ゲン カって感じ。アルバムの中で繰り広げられるのは、時代遅れなものを 得意げに見せびらかす従兄弟たちやジュラシック5のクソみたいな 曲をかけてるパーティ、携帯電話なんか当たり前のひどい状況に対 するストリートファイトなどだ。「名ばかりの黒人/俺はお前んちで パーティー中/タイガー・ウッズ/俺はヤツみたいになりてえ!」。お いカニエ・ウエスト、この曲を聴いたか?

「Dwyck」のドラムと「イット・エイント・ハード・トゥ・テル」のホー ンを借用した「ミラー・タイム」では、ヒップホップ・マーケティングの 中における自分の役割を過剰なまでに演じてる:「俺たちは黒人なの に/信頼を勝ち取ってる/だけど別に脅迫なんかしちゃいない」。そ して気取った感じの曲「アイム・ノット・ア・サグ(※俺はチンピラじゃ ない)」はタイトルが内容を物語ってる。

プラスティック・リトルが作り出すその跳ねるビートは、何重にも折 り重なって混沌としており、たまにEL-Pがフザケた感じになったよう にも聞こえる。でも、プラスティック・リトルはマイナー志向のラップ・フ ァンたちなんか目もくれない。連中の目はまったく別のものに向けられ てる。プラスティク・リトルの中心メンバー、ジェイソン・マッセンは数年 前に「BETに出演するには黒すぎる」っていうタイトルのプロパガンダ ・パンフレットを制作した。マイティ・ケイシーが予想外の成功を収め たことを見れば、このメッセージはBETにはもはや当てはまらないかも しれない。マッセンと他のメンバーたち自身も良く分かっている通り、 彼らの曲に込められている本当の目的は、黒人びいきに教育していく ことだ。たとえ誰も彼らの声に耳を傾けないとしても。

JON CARAMANICA
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