DOS & DON'TS




THE CREATORS PROJECT - SPIKE JONZE







Photo by James Kendi




グランジが消え始め、男性アイドルグループが流行り始めていた90年代の前半。大学を卒業したばっかりのパット・ガブラーの加入により、タワー・レコーディングズというバンドが結成された。パット、そしてメンバーのマット・バレンタインと妻のヘレン・ラッシュは奇妙な共同体として幸せに3人で暮らしていた。この奇妙でダルな3人組はその後最も実験的な「フォーク・ミュージック」のオリジネイターとなっていった。「俺たちは常に曲の“スケッチブック”を作ってたよ」とパットは言う。「俺たちは演奏したかった」彼らの日々は汗でびっしょりになる洋服と、自意識から遠ざけたブラックライトの瞑想で終わる音楽的なトリオであった。「最高だったよ」とパットは言う。「タワーが我々を乗っ取った」。

 だが彼等のユートピアは続かなかった。マットとヘレンは離婚した。バンド仲間としてハグをしても「ウェ〜、気持ち悪い」というどうしようもない気持ち。バンドとして続けようとしたが、愛がなければ始まらない。貴重なロイヤルダイアモンドのように割れ、タワーは3つに分裂した宝石となった。

 パットはP.G.シックスというソロプロジェクトを始めた。この3年間、彼は止まることなくこれに集中して今までに2枚のフルアルバムをリリースしている。1枚目のアルバム『パーラートリックス・アンド・ポーチフェーベレット』ではパットはタウンズ・バン・ザントのような昔のアメリカのストーリーテラーが虫眼鏡を透して見るジプシー神話学を語った。

 2枚目のアルバム『ザ・ウェル・オブ・メモリー』でパットは海の情緒的な感覚を感じさせてくれる。これは宇宙世界が僕たちを包み込み、大きな空から手が伸びてきてハグされているような感じだ。例えるなら、君がササフラスティーを作っている間にソファの上でペダルスティールを弾く感じの音楽かな。

 パットはバンジョーからフォークハープから6弦まで、最近のバンドの奴らが存在すら知らない楽器を弾く。ぺーゲンロックが復活してきている現在で、P.G.シックスは今までいなかったファンを獲得している。パットはハドソン・ヴァリーの神聖なミューズと通信しようとしているらしく気づいていない。「分からない」とパットは流行ってるアバンギャルドフォークに対し語る、「そんなに大した事ないだろ?今になってやっと注目を浴びるようになったが、俺は今までずーっと変テコなアコースティック音楽を好きでやってきたからね、今さら誰が何言ったなんて関係ないだろ?」

MAX ANDRE

『ザ・ウェル・オブ・メモリー』は〈アーミッシュ・レコード〉から発売中。