KEIICHI SOKABE

“自分のロックは異物であって欲しい”と願う下北のパンクロッカー

INTERVIEW AND PHOTO BY KAZUYUKI MATSUSHITA



オレが曽我部恵一の音を初めて聴いたのは12年前のコト:初めてロスへ行った時に現地の知り合いに渡すミヤゲとして持っていったのがサニーデイ・サービスのCDだった。周りに砂漠以外なにもない真っすぐなフリーウェイを何時間も走り、その車内でサニーデイを爆音で流したのを憶えている。真夏のロスの強い日差しとエアコンの壊れた暑い車内に流れるサニーデイの切ないメロディー。今でも鮮明に思い出せるほどの思い出だ。それから3年後の2000年にサニーデイ・サービスは解散。サニーデイ・サービスのリーダーだった曽我部はその後ソロ活動を始めた。そして2004年、自身が主宰する〈ROSE RECORDS〉を立ち上げ、彼は新たに“曽我部恵一BAND”を結成。昨年にはとうとうサニーデイ・サービスも再始動させ、今年は“FUJI ROCK FESTIVAL 09’”にも出演予定。そんな彼に今回VICEは、レーベル〈ROSE RECORDS〉のコトや今月リリースされたばかりの曽我部恵一BANDニューアルバム『ハピネス!』について訊いてきた。


まずはレーベル〈ROSE RECORDS〉を始めたきっかけについて聞かせて欲しい。
元々自主レーベルは持ちたいと思っていたものの、その機会がなかったんですね。普通なら自主レーベルを持ちたくてもそれではなかなかオカネが回っていかないから、メジャーレーベルに所属してそこからオカネをもらうスタイルが多い。でもボクは、所属していたメジャーレーベル〈ユニバーサル〉との契約が切れた時、ちょうどイイタイミングだと思って独立したんです。

なるほど。始めた当初はどんなカンジだった?
最初は“遊びの延長線”というか、“ちゃんとやっていこう”的な気はあまりありませんでした(笑)。なんかこう、ユルいカンジで。

事務所は下北沢だけど、それは昔から変わらずなのかな?
そうですね。或る日、下北をブラブラしていたら、と或る不動産屋でふと“事務所くらいの物件ってどれくらいで借りられるのかな”と気になって見てみたんですよ。そしたら、家賃もそれほど高くない上に良さそうな物件があった。それで実際見に行ったらスゴく良くて。“ココならレーベル運営も出来るな”と思って借りることにしたんです。

えっと、それってつまりその日に即決めしたってコト?
ハイ、即決めでした(笑)。見せてもらった後に1時間ほど下北をブラッとして、それからまた不動産屋へ戻って「借りまーす」って(笑)。なんか自分とバイブスが合ったんです。“ココなら、仕事しながらスゴくイイ日々を送れそうだ”みたいな直感があったみたいで。周りこそ“自転車屋さん/おっちゃん経営の美容院/マダム用アウトレットの店”みたいな並びの中にあるんですけど、そういう中でレーベルをやるのもイイんじゃないかなとも思いますしね。

レーベルが〈ROSE RECORDS〉で会社名はスタジオローズ。“ローズ”というコトバになにか思い入れがあるの?
いや、それが特になくて。ジャーマンロックのAsh Ra Templesのメンバー・Manuel Gottschingがソロで出したアルバム『E2-E4』でハウスの原型みたいなコトをやってるんですけど、ボクはそれがスゴく好きで。その彼が自分のスタジオを“スタジオ・ローマ”と呼んでいたんです。ドイツなのに“ローマ”ってトコがイイなと思って。それをモジって、“スタジオローズ”(笑)。だから特に深い意味とかはないんです。その流れでレーベルも〈ROSE RECORDS〉にしたんですよ(笑)。

去年からサニーデイ・サービスが再始動しているけど、曽我部恵一BANDと両立していく上でサニーデイはどういう位置づけで動いていくのかな。
今やっているソカバン(曽我部恵一BAND)は“アッパーなメッセージとハッキリした世界観”が特徴で、コトバに出来ないような感情はそれほど歌ってないんですよ。なんというかこう、“ガツーンと声出していこうぜ!”みたいな位置でやってるから。その一方でサニーデイは、ソカバンのそういう部分からこぼれ落ちたモノを拾って再構成されているカンジなんです。そうして、サニーデイじゃないと出来ないコトがなんとなく見えてきた。それならソカバンと平行してやっていけるかなと思ってサニーデイもまた始めるコトにしたんです。

今年のFUJI ROCKではサニーデイ・サービスが出るみたいだね。昔の曲も入れ混ぜての演奏になるのかな?
演奏する曲の半分は新曲になると思います。と言うのも、昔の曲とはまだ距離を感じてるんです。その辺りも含めて、“再結成しました!” というよりは“再始動”とか“再デビュー”みたいなカンジで捉えてもらえると嬉しいですね。でもお客さんは昔の曲も聴きたいと思うので、昔のもやりつつだとは思います。昔のイメージがあるからこそ、前と同じことをやってもダメだし、全然ちがうコトをやってもダメなんですよね。

『ハピネス!』のサンプルを聴いたけど、正直なところ、曲のストレートさやパワーをオレの中で消化しきれてないカンジだ。
ボクがやってるコトって、BGMや音楽ってカンジじゃないと思うんですよ。“自分は生きてる”的なエネルギーを出したいだけですから。ソカバンの音楽で心地良さをもたらしたいとか、そういうつもりはないんです。サニーデイはもっと音楽的なんですけどね。例えばボクは下北でカフェもやってるんですけど、そこではソカバンをかけてくれない(笑)。サニーデイとか、ボクの弾き語りのCDはかかってたりするんですけどね。まあでも、そういうトコでかけるモンじゃないっていうのはみんな分かってるコトだから。

歌詞を聴いてると、なんか恥ずかしくて照れちゃうね。
だからやっぱり、自分のロックは“異物”であってほしいなと今は思います。アルバムに「東京ディズニーランド」という曲があるんですけど、それなんかもう、チンコを出すくらい自分をさらけ出してるカンジなんですよ(笑)。自分の曲を聴く人たちとはリアルな関係性を作りたいなと常々思っていて、かと言って別に気に入られたいワケではない。つまりは音楽を通じたコミュニケーションをしたいんです。みんなの共感を得るようなコトをしていくのも1つだとは思いますが、それだとつまらないし。だから今のカンジで今後も続けられたらイイなと思いますね。

そういえば昨日、YouTubeで曽我部恵一BANDの新しいPVを観たよ。
そうですね、アレはちょうど昨日ボクがアップしたんですよ。

アレって普通の路上で撮ってるね。最近じゃドコも撮影許可を取らないとウルサイけど、あのカンジだともちろん取ってないよね(笑)? 大丈夫だった?
許可取らずに演奏しましたね。しかも、演奏中のボクたちの真後ろには“演奏禁止”と書いてあった(笑)。最初からちゃんとPVを撮ろうと思っていただけに、撮影中に警察が来たりしたらマズいワケです。だから事前に下見へ行って“このくらいの大きさの音なら大丈夫かな?”という確認はしたものの、やっぱり彼らは来ましたね。演奏が終わった途端に「ハイ、こっち来て」みたいな(笑)。でも連行されたのがたまたまカメラマンだけで、その彼が「偶然ココを通りすがったから、持ってたカメラで撮影してただけです」と誤魔化したら、「キミは関係ないのか」と見逃してくれたんですよ(笑)。


曽我部恵一BANDのニューアルバム『ハピネス!』は〈ROSE RECORDS〉より発売中。ニューアルバムに合わせて6月9日から全国ツアー『曽我部恵一BAND TOUR2009 ハピネス!』もスタート。
http://www.sokabekeiichi.com/

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